牛の食欲

 

そろそろと漫ろ歩くふたつのそれは
すれあってもこすれあっても
すべてのとろを
とろとろにとろけさすまで
奥へ奥へとするするに入りこみながら
まわりのまあるい
やわらかなひだやら肉やらを
蠢く蛆虫さながら躰ごと頬摺り
悠久のとろけのなかで
深淵から這いあがる胎児を懐かしむ
老婆の自慰に
どこか似ていることにうんざりする
かじられた桃、卵、そして
にぎり潰されそうな乳房たちの
いつものもみくちゃに
歓喜の産声を上げながら
赤子を撫でるように
そのまわりにへばりついたとろを
それはやわらかくも逞しく
あやしつづける
まるで、牛の食欲のように…