艶笑譚 ◆◆◆◆◆ 結婚
もしかすると結婚とは、自身を認識するためのある意味では最も有効な手段なのかもしれません。
ふだんの生活のなかで、人との関わり方を考えてみた場合、自分自身も含めて、家族は母語のように何気なく自分と接しているはずです。それがあたりまえだからです。知人、友人、恋人はどうでしょう。きっと外国語を話すように接しているのではないでしょうか。知人は覚えたての外国語で、友人は日常会話程度。親友や恋人はほぼ完璧に使えるようになった外国語です。なんとなくそんな感じがしませんか? そして問題の結婚です。結婚をそのまま日本語教師養成講座に置き換えることができます。結婚することによって、その相手と家族として接するようになりますが、これまで別々の家庭で生活してきた者同士がひとつの家族として暮らすことは、お互いの生活における価値観やスタイルのちがいを知ることにもなります。いままで無意識のうちに生活していた、自分にとっていちばん楽であたりまえのことが、相手にはそうでなかったりすることが多いはずです。そのちがいを通 してあらためて自分の生活事情を知ることができます。それはイコール自分自身の再認識につながります。自分にとっていちばん楽であたりまえのところにかくされている、ふだんはなかなか見ることができない部分にこそ、不覚にも本当の自分がひそんでいるのかもしれません。
◆ ◆ ◆ 物入り ◆ ◆ ◆ むがし、ある金持ぢの家(え)で、跡取りさ安心して身上(すんしょ)まがせられるような嫁さん探してだんだど。そしたどごろ、それなりの似合(にえ)え似合えの家に、しっかりした娘がいるどいうんで、貰うごどに決めだど。 金持ぢっていうのは、握ったら放さねえつうごどだが、そういう考え方で両家がうまぐいったんだべな、 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
★参照…『みやぎ艶笑風流譚』(佐々木徳夫著・無明舎出版) |
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