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パースペクティブ・エモーション(透視的情動)〜未知の地平へ〜
向井千惠
PERSPECTIVE EMOTION/透視的情動(以下PE)は私、向井千惠が提唱し1998年から年1回年末に2日間開催されるミクストメディアアートのフェスティバルである。その内容は音楽、ダンス、パフォーマンス、映像、美術、朗読等のアーティスト約30名を予め実行委員が選出し、当日くじ引きで組み合わせを決め、選ばれた者が一定時間即興的にパフォーマンスを行なうものだ。二部構成から成り、一部ではくじ引きとパフォーマンスを繰り返し行い、二部では全員による集団即興を行なう。
現在の実行委員は向井千惠(胡弓,voice,dance)、石川雷太(美術,sound)、サエグサユキオ(performance)、万城目純(dance,映像)である。これまで西荻WENZ STUDIO、法政大学学生会館ホール等で9回、パリのLes Voutesでも2回開催されている。
このフェスティバルを始めたきっかけは、私が1998年夏に二度目の上京をし、中野WEST END STUDIOでMMACフェスティバル(Mixed Media Art Communications 星野共主宰)を見たことであった。自分もこういうものをやりたいと思い、石川雷太等に呼びかけ第一回を12月に西荻WENZ STUDIOで開催することとなった。
PEの最大の特徴は組み合わせも即興的に決定されるということだ。それによって普段あり得ない組み合わせが起こる。そして予想を遥かに超えたパフォーマンスが展開される。いつ誰と共にパフォーマンスするかわからない状況は、予定調和を遠ざけ、アーティスト達の新しい可能性を開いていく。
「未知の地平へ」というサブタイトルであるが、これこそがPEの目的である。未だ誰も到達したことのない地平、偶然性によって作り出される組み合わせと各アーティストのパフォーマンスの見えない繋がりによって増幅されたエネルギーが、未知の時空間を現出させる。それはサイケデリックであり見る者の魂を揺さぶるものだ。それはアートシーンのみならず世界全体を牽引する力となる。そしてそれこそが前衛アーティストの使命である。
実行委員会では2001年よりPEと同様のやり方で即興表現ワークショップ(以下,WS)を行なっている。PE本番やWSのおもしろいところは、知らない者同士でも表現によって簡単に繋がり合えるということだ。自分を開きその時にやりたいことを素直に表現すれば、何十人が同時にやっても単なる混乱には至らない。自然と調和のとれたアナーキズムが現出する。それは社会生活にも置き換えられるだろう。
WSの謳い文句は「ノージャンル!ノーテクニック!ノーボーダー!」である。鍛錬されたテクニックがなくても表現は可能だ。今迄見ていた人がパフォーマンスをし出す。音を出していた人が踊り始める。ダンサーが声や音を出す。ダンスかパフォーマンスか?音楽か舞踏か?カテゴライズされない表現が斬新でおもしろい。軽々とジャンルを超えボーダーが無くなっていく。それこそが我々の目指している表現である。どうぞPEとWSにいらして体験してください!
「第10回PERSPECTIVE EMOTION/透視的情動」は2009年12月29日30日、中野WEST END STUDIOにて開催! http://www.studio-life.com/westend/
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