デカダンダンダンス ◆◆◆◆

不眠芸人の結末

 

結局、私の徹夜は10日間に及びました。この間の睡眠時間は約10時間。もちろんその中には、パソコンのマウスを握ったまま気が付いたら2時間も過ぎていたという超常現象や、電車で約1時間のクライアントのところに2度行ったときの往復4時間の居眠りも含まれています。家の者には仮眠を取っていると嘘をつき、友人たちも私ならやりかねないと思っているらしく、いつもと変わらずに接してくれたため、私はこの10日間をすこぶる快適に過ごすことができました。一大事が大袈裟にならないことの快感は、手淫に匹敵するほどです。


私はここ数年(正確には10数年)ほとんど腹が立っていません。なぜなら、腹が立つことなど何もないからです。家の中では時々怒っているように思われがちですが、それは本能としての自己防御からくる虚飾を家族が理解できないために起こる幻覚なのです。

いつからそうなったのか…。20歳前後の頃の私は、レフトサイド思想を妄信していた危険分子予備軍で、何かと世の中に腹を立てていたものです。それが、何気なく出会った『荘子』を、感動するでもなく、安定剤のようにいつも持ち歩き、何処となり取り出しては偶然開いたページを読むようになってからです。

それからというもの、自分以外をソフトアイで見るようになった私は、世の中の有象無象が

それほどたいしたことではない

と思うようになりました。自分では悟ったと思っているのですが、周りの大半にはつまらない人間だと思われてしまっているようです。感情を表に出さないとか、もっとホンネを言えなどと、よく言われますが、ないものは出せないし、それがホンネなのですから…。


今日、娘と久しぶりに食事を共にしたところ、なんと徹夜1回につき百円の罰金という一方的な法律を突きつけられ、千円の罰金刑に処せられました。その時は覚悟したものの、いま考えてみるとどうも納得できません。これはひとつ、屁理屈をこねて相手を欺き、それでもダメなら

怒ったふり

で威嚇し、なんとしてでも無罪を勝ち取ろうと企んでいるところです。


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